京都市左京区にデンマーク出身の茶道講師がいる。
スァーン・ビスゴーさん(54)。
現在の日本人に対する考え方を聞いてみた。
ビスゴーさんは、インドで哲学を学んだ後、
30歳の時に禅を学ぶために来日。
裏千家で茶道を学び、自宅などで教えている。
彼の住宅は木造二階建て。
築70年を越え、6年前に見つけたときは、
痛みや汚れも目立ったあばら屋だったと言う。
自分の手で天井や柱を磨き、むき出しの電気配線を壁の内側に通し、
汚れた壁紙をはがして、土壁を塗って再生した。
修理の仕方は、本を読んだり、人に来たりして調べた。
材料は、取り壊される古い町家からのもらいものや、
骨董市で安くてに入れた品もあると言う。
自分で手直しした住まいに入ると不思議な安心感に包まれる。
初めて訪れた人もなにか暖かさを感じ、落ち着くと評判だ。
住宅メーカーに頼めば、数ヶ月で現在的な住宅に建て替えることもできる。
しかし、「買うだけでは、文化は身に着かない。自分ですること、
ノウハウ、それが文化です」とビスゴーさんは言います。
たとえば、家を作るにも、お金で買うのは簡単だが、
それでは本人にはなにも残らない。
しかし、自分でやれば、その過程を楽しむことができ、
自分でできたと言う自信が生まれる、愛着もわく。
それがその人の尊厳や品格(dignity)につながるという。
ビスゴーさんは子供の時から、料理や皿洗い、掃除、洗濯、
電気製品の修理など、何でも自分でやれるように親からしつけられた。
今あるビデオデッキやレコードプレーヤーも捨てられていた物を
自分で修理したものだ。
そうやって身につけた技術、それがその人の「文化」という。
物があふれる中で暮らす日本人の生活がビスゴーさんには
「ハッピー」とは映らなかった。
「お金がなくても、自分の文化がわかっていれば、品格は備わる。
お金を使わずに自分で何でも作り、何でもすることができるから。
バブル時代の日本人はお金で何でも買えると思ったでも
品格はお金では買えない」
として日本人に改めて足元の文化の見直しを勧める。
読売新聞から掲載させていただきました。 |